三心通信 2018年12月

 

もうすでに12月も後半に入ってしまいました。11月30日の夜から12月8日の朝まで臘八接心でした。そして9日に成道会の法要を行いました。それからしばらく体力、脳力を回復させるために休んでいると年末が目の前に迫っていると言う感じです。

 

今回の臘八接心は10人ほどの人たちが最初から終わりまで一緒に坐りました。西海岸のベイ・エアリアからの人たち、東海岸のニューヨークからの人たち、シカゴから来た人など遠隔地からこの1日14炷、坐禅だけの接心を坐るために仕事を休み飛行機に乗って、あるいは半日自動車を運転して来てくれる人たちには頭が下がります。地元ブルーミントンの人たちも日に何炷か坐っていく人が数人ありました。7日は、午後9時に経行の代わりに簡単な行茶をし、深夜12時まで坐ったのですが、15人以上がいました。開静の後、成道会のお経を読んで終わりました。

 

8日の朝は8時に起きて坐禅堂その他の掃除をし、9時から朝食をとって解散しました。臘八接心の後には毎年話すことですが、私は1970年の12月8日に安泰寺で内山老師から市田高之さんと一緒に出家得度を受けましたので、毎年臘八接心が終わるとその記念日になります。釈尊の成道に感謝するだけではなく、私個人にとっては本師内山老師に感謝し、老師から受け継いだ誓願を新たにする機会でもあります。今年は48回目の記念日でした。50年近くが経って70歳になっても、まだ接心を椅子坐禅ではありますが坐ることができること、またアメリカにいても一緒に坐ってくれる人があることに感謝せずにはおられません。 

 

9日が日曜日だったので、成道会の法要をいたしました。この日には毎年、釈尊の成道にちなんだ法話をしております。今回は、「句中玄」の解説をする詩が丁度釈尊の成道と関連がありますので、その詩の話をしました。門鶴本を使っております。

五葉華開重六葉、(五葉華開いて六葉を重ぬ、)

青天白日似無明、(青天白日明無きに似たり、)

若人問我看何色、(若し人我に何なる色をか看ると問わば、)

此是瞿曇老眼睛。(此れは是れ瞿曇の老眼睛。)

 

五葉華と言うのは梅の花。六葉というのは雪の結晶の六角形から来た表現で、雪のことです。これで、永平寺の冬景色が表現されています。白一色の雪の中に梅の花が咲いています。そのうえにまた雪が降っているという風景です。雪裏の梅華というのは天童如浄禅師の臘八の成道に使われた表現です。道元禅師の臘八上堂は「永平広録」の中に8つ記録されていますが、そのうちの6つに雪の中に咲く梅の花のイメージが使われていますので、この詩もその頃の永平寺の冬景色と釈尊の成道とを重ねて読まれているのだと思います。 

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 *成道会の時の祭壇です。普段は文殊菩薩が坐っておられるのですが、三佛忌の時にはお釈迦様と場所を交代しています。

 

接心が終わって少し休んだ後、良寛さんの詩を10首ほど訳しました。以前他の人が訳したものを使って、それらの詩について話したものを誰かがトランスクリプト(以前日本語では「テープ起こし」と言っていましたが、テープを使わなくなった今では何と言う表現を使えばいいのか知りません)してくれました。それをエディット(添削)して公表できるものにしてくれている人がいます。その人から、私は話の中で、講本として使った英語訳のいくつもの箇所を批判したり、難癖をつけたりしているので、その翻訳を作った人に失礼だろうから、自分の訳を作るようにと申し渡されたのです。私の好きな馴染みのある詩ばかりですので、喜んで自分の英語訳を作りました。現在、Dogen Instituteのウエブサイトのために月に一首、「句中玄」に収められている道元禅師の漢詩の私なりの理解に基づいた解説を書いております。その後には良寛さんの和歌や漢詩について書きたいと考えております。ただし、「句中玄」には道元禅師の漢詩が150首ほど収録されていますので、月に一つのペースで書き続けるとすれば10年以上かかることになりますので、なんとか考えなければななりません。

 

その後は、来年の眼蔵会の講本にする3巻の翻訳を始めています。3月のノースカロライナ州チャペル・ヒル禅センターでの眼蔵会には「正法眼蔵面授」、5月の三心寺の眼蔵会には「三界唯心」、11月には「説心説性」の講読をする予定でおります。2002年から年に3回か4回の眼蔵会をしておりますので、40回以上になります。1巻読むのに2回か3回かかることもあり、同じ巻を2、3回読んだものもありますので、何巻読んだのか正確に計算したことはありませんが、三心寺での眼蔵会においては、だいたい75巻本の順番に読んでおります。最近、75巻本の後半の巻に入ってきました。これまで、細かく勉強したことのない巻が多く、翻訳や準備に以前よりもたくさんの時間がかかります。また、年齢のせいで体力、脳力の衰えが顕著になってきて、集中して仕事ができる時間が少なくなっています。能率を考えるとぼちぼち限界なのかなと思うこともあります。しかし、多くの人たちが遠方からきてくれるので、できるところまでは続けなければと思いを新たにしております。

 

今年もあと半月をきり、年末が目の前に迫っております。日本でも、世界の各地でも天変地異の災害や人災で、多くの人々が困難な日々を送っておられるのをニュースで見ます。来年は過ごしやすい年でありますようにと願わずにはおれません。

 

 

2018年12月17日

 

 

奥村正博 九拝