三心通信 2019年6月


五月の後半から六月にかけて雨の日が多く、ジメジメとした天気が続いています。あっという間に清々しい新緑から、むしろ圧迫されるような深緑へと代わりました。おかげで、裏の苔庭は緑が綺麗で、まだ一度も水やりの必要を感じていません。境内には例年通り夕方になると蛍が飛びかうようになりました。昨年から、芝生の部分を少なくして、境内の半分くらい、この辺りに野生している草花を育てようとしています。冬の間にタネを蒔いたのですが、まだ雑草しか出ていません。

六月は例年通り5日間の接心から始まりました。1969年の一月に最初に安泰寺の接心をすわらせていただいてから、50年が経ってしまいました。22日に71歳になりましたが今でも曲がりなりにも接心ができることを感謝しています。ここ数年、膝の痛みのために足を組んで座れなくなりましたので、椅子坐禅です。椅子で坐るのが楽なのは膝だけで、一点で上半身を支えなければなりません。足を組んで座るときには、両膝と尻の3点で支えることができるので安定するのですが、バランスを取るのが難しく、またどうしても腰に負担がかかります。それで、昼食後すぐにYMCAに行き、1時間ほど歩き、ストレッチをし、シャワーを浴びて、午後2寺頃にお寺に戻り、3時まで休憩するようにしています。一日14炷のところ12炷だけ坐ることになります。それでも、5日間の接心が終わると、エネルギーの備蓄が完全に空っぽになります。2、3日何をする気力も出てきません。完全燃焼したようなもので、悪い気分ではありませんが、その間全く使い物になりませんので、他の人たちに申し訳なく思っています。

これでも坐らないよりましだろうと居直っています。私は内山老師のように、坐れないときには「南無観世音菩薩」の称名でいくということができません。椅子坐禅でも、一緒に坐っている人たちの邪魔になっているなと感じるまでは坐り続けようと願っています。もうそれほど長い年月がのこっているわけではありませんので。それにしても、アメリカに来てから25年以上経ちますが、今も、一緒に「正法眼蔵」の参究をし、坐禅を共に行じてくれる人があることを有り難く感じています。

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接心が終わった次の日曜日には、サンガ・ワーク・ディとして朝8時から1炷坐り、9時から5時まで、境内の整備、掃除、その他の作務をしました。15、16日の週末に首座法戦式があり、カリフォルニアから秋葉総監老師に助化師としてご来山いただき、その他の人々も各地から来てくれるからです。ニューヨークから小山一山さんのグループが合計4人、首座である黙祥Depreayの奥さんであるフランソワさんがベルギーから来られて1週間ほど滞在しました。フランスやポーランドからの人たちもありました。

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今回の法戦式の本則は「従容録」第2則「達磨廓然」でした。日本では法戦式の本則は「達磨廓然」が多いように思いますが、三心寺では、これまでほとんど毎年法戦式をしていますが、この則を取り上げるのは初めてでした。毎年、首座に本則を選んでもらっています。15日の本則行茶のときには、いつもどおり私が提唱をしました。「無功徳」「廓然無聖」「不識」は澤木老師の「何にもならない坐禅。Zazen is good for nothing.」の淵源ですので、耳にタコができるほどに聞かされている人たちには多くの説明は必要ないようでした。

秋葉総監老師は、本年総監部の書記の方がたには他の用事があるとのことで、お一人でおいでになりました。また、16日午後のフライトでカリフォルニアに帰らなければならないとのことで、昨年と同じく法戦式が終わり、集合写真を撮影すると、昼食も取らず、すぐにインディアナポリスの空港に出発されました。天平山の僧堂建立のためにご多忙のところ遠路お出でいただいて申し訳なく、ありがたく存じました。

7月に3日から8日まで、夏季安居最後の行事の禅戒会があります。例年通り、最終日には受戒の式があります。今年は副住職の法光が戒師になりますので、禅戒の講義も法光が担当します。これから私が引退する2013年まで私と法光が交代で戒師を務める予定にしております。法光が住職になったときに彼女から受戒した人たちがいるほうが、世代の交代をスムーズになるだろうと考えました。今回は5人の人が受戒します。

ミルウォーキー禅センターの前の住職だった洞燃・O’Connorさんに、私が何年も前にバークレイ禅センターで行なった良寛さんのいくつかの漢詩、和歌についての講義のトランスクリプションをしていただきました。それと、洞燃さんご本人がこの5月に新潟の良寛さんと関係のある場所を訪ねた経験について書いたもの、そしてそのときに撮影した写真を合わせてDogen Instituteから刊行することになりました。そのプロジェクトのために私は、「道元禅師と良寛さん」についてと、「良寛さんと子供たち」についてと2章書き加えることになりました。そのために良寛に関する本と、「全歌集」、「全詩集」を読み返しております。


先週の日曜日に私は71歳になりました。中期高齢者と言うのでしょうか。内山老師が最晩年に描かれた、「老いからの現地報告」が自分のこととして理解できる適齢期に入りました。

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6月27日

奥村正博 九拝