三心通信 2018年8月

 

8月も下旬に入り、朝夕は涼しくなりました。毎年のことですが、胡桃の木が身をつけ始め、葉っぱも色づき始めました。気の早い胡桃の実は早地面に落ち始めました。境内の木々に住み着いているリスたちが胡桃を集めて、地面に穴を掘って隠す作業を始める時期です。先日、近くの公園を散歩していると、野球のグラウンドに20羽ほどの雁の一群が、休息していました。渡りの途中なのでしょう。生き物の世界ではすでに季節が動いているようです。

 

今月9日から14日まで家内と一緒にミネソタに行きました。主な目的は私の弟子の正道・SpringがはじめたMountains and Waters Zen Communityの農場でのリトリートに参加することでした。正道は2005年に私から出家得度を受け、5年間三心寺で修行して、嗣法したあと、ミネソタ州ミネアポリスから自動車で1時間ほどのところに17エーカーの農場を買い、Mountains and Waters Zen Allianceとして活動しています。私の「正法眼蔵山水経」の講義をもとにしたMountains and Waters Sutraの本をエディットしてくれた人です。弟子とはいえ私と同じ年齢です。

今回のリトリートは Land Care Retreatと呼ばれました。自然の中で、自然に学び、自然を世話する中で、坐禅を行じていこうという趣旨でした。早朝の坐禅と朝食の後、およそ2時間、それぞれ、自然の中を歩き(walking meditationとよばれました)、そのあと正道が短時間話をし、感じたことをグループに分かれて話し合いました。昼食前に1炷の坐禅をし、午後は作務がありました。

 

夕食後、私が「山水経」へのイントロダクションとして蘇東坡の「盧山の詩」と「永平広録」から宏智禅師と道元禅師の偈の話をしました。先月バレー禅堂でした話と同じ内容になりました。「山水経」はかなり長く、美しい文章ですが、わかりづらい内容ですので、基本的に何について書かれているのかを説明するのに、これらの3つの詩は便利だと思います。

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日曜日にリトリートが終わった後、家内と私はミネアポリスに行き、水曜日まで友人宅に宿泊させていただきました。片桐大忍老師の奥様、智枝さんにお会いしました。87歳になられて、片方の眼が半分見えないということでしたが、それ以外はお元気そうでした。

 

ミネアポリスから帰ってからは、先月書きました良寛詩の本のために、道元禅師と良寛さんについての原稿を書きました。良寛さんの仏教と当時の宗門の状況についての、基本的な考えを知るために、これまであまり英語では読まれていなかった「僧伽」「唱導詞」「読永平録」という3つの長い詩を訳し、それらについての解説を書きました。予定よりも随分長く30ページほどになりました。

 

最近あまり良寛について考えたことがなかったので、今回の文章を書くために「良寛全詩集」「良寛全歌集」をはじめ30冊ほどある日本語の良寛についての本と、10冊ほどある英語の本のほとんどに、精読する時間はありませんでしたが、目を通しました。もう一度良寛を見直すことができてありがたい機会でした。

 

 

 

2018年8月23日

 

 

 

奥村正博 九拝