三心通信 2018年5月

 

五月もはや半ば、新緑の候になり気温も摂氏30度近くまで上がるようになりました。芙蓉やジャーマン・アイリスなどの、大きくて豪華な花が庭を飾っています。昨日と今日雨が降り、苔庭の緑が綺麗です。

 5月1日から6日までの特別眼蔵会は無事に円成しました。ミネソタ州から来ていただいた白蓮・レギア師、シカゴからの太源・レイトン師からそれぞれ、私にはできない講義をしていただきました。講本は「正法眼蔵行仏威儀」でした。長くて、しかも内容の濃い巻ですので、一語一語、丁寧に説明することは5日間の眼蔵会では無理でしたが、道元禅師が、独特の表現で教示されようとした内容は的確に話していただいたように思います。三心寺で受け入れられる限界の22名の参加者がありました。

 5日目の日曜日には、私の最後の講義は半分の45分にし、3人の講師によるパネル・ディスカッションがありました。この部分は、一般の人々にも公開されましたので、眼蔵会参加者を含めて40−50名の人々が三心寺の創立15周年を祝うために集まっていただきました。 

f:id:sanshintsushin:20180521213559j:plain

今年に入って、大通・トム・ライトさんが訳された内山老師の「正法眼蔵有時」「諸悪莫作」の提唱の英語訳に私が訳した「摩訶般若波羅蜜」の提唱を加えていただいたDeepest Wisdom, Deepest Practiceが1月に出版されました。今回の15周年記念出版としてDogen InstituteからBoundless Vows, Endless Practice,と内山老師の「生死法句詩抄」の英訳の改訂版を出しました。そして、5月末には私の「山水経」の講義を基にしたMountains and Waters SutraがWisdom社から出版されました。

 三心寺のダルマ・スタディ・グループで、2、3年かけて長円寺本「正法眼蔵随聞記」の英語訳を続けました。80年代に、岩波文庫の面山本を底本とした英語訳を作り、現在でも曹洞宗宗務庁から教化資料として出ていますが、長年、長円寺本の英訳を作成したいと願っておりました。おかげさまで、今回、長円寺本「随聞記」がWisdom社から出版される運びになりました。スタディ・グループで一応作成した英訳原稿に私が全体を見ながら調整したドラフトを、弟子の一人道樹・レイトンさんがもう一度、全体を見直して出版社に送るれる原稿を作成してくれています。道樹さんは今年の9月からインディアナ大学の大学院修士課程に入り日本仏教を勉強する人です。今週から週一度金曜日の朝に会って、訳文の調整などをしています。今年の秋までに原稿を出版社に送ることができれば、来年中には刊行されることになると思います。

 もう一つ、三心寺のニュースレターに数年間連載した「道元禅師和歌集」の英語訳と一つ一つの和歌についての私の解説が昨年12月で完了しましたが、現在、もう一人の弟子の浄瑩・ホワイトヘッドさんがエディットしてくれています。浄瑩さんは、Zen Teaching of Homeless Kodoのエディットをしてもらった人です。

 現在、ダルマ・スタディ・グループでは「道元禅師語録」の英語訳をしております。例によって、私が英訳の第1稿を作り、私が意味の説明をし、数名の参加者の人たちに英語の表現を検討してもらうという方法でやっております。太源・レイトン師と共訳した「永平広録」の英語訳、Dogen’s Extensive Recordと対照していますが、様々な興味深い違いがあります。この違いが誰によって、どのようになされたのか資料がないので完全に究明されることはないでしょうが、考え続けたいと思います。

 もう一つは「道元禅師和歌集」が終わった後、面山瑞方師によって道元禅師の漢詩150首が選びだされ「洞上句中玄」に収録された漢詩の英訳を「永平広録」の英語訳、Dogen’s Extensive Recordの英語訳を紹介し、私のコメントを加えて三心寺のニュースレターに連載しております。私たちの英語訳は門鶴本を底本にしていますので、面山本に基づいた「洞上句中玄」とはやや違っている部分があります。その場合には、違いを指摘するようにしております。

 これらが、現在取り組んでいる仕事です。終着点というものが見えてきません。体力と脳力が続く限り、このようなことを続けていくのだと思います。もうすぐ、接心の指導は副住職の法光が担当してくれるようになる予定ですので、少しは時間的な余裕ができるものと期待していますが、余裕はあっても、1日にこういう仕事ができる時間は短くなってきています。何時間も続けてコンピューターに向かっていることができなくなりました。休憩しながらでないと、どうにも頭が働かないのです。自分でも信じられませんが来月には70歳になります。しかし、70歳になってもできる仕事に恵まれていることに感謝せざるを得ません。

 先月の三心通信でお知らせしましたように、7月には私の日本語の本が出版され、その機会に日本でいくつかお話をする機会を作っていただきました。この25年間、公開の場で日本語でまとまった話をしたことはありませんので、どのようなことにばるのか心配しています。

 5月19日

 

奥村正博 九拝