三心通信 2020年6月

 

3月後半から4月、5月と、それほど寒くも暑くもないない早春から初夏まで、季節の中で移り変わる花たちや、小鳥の声を聞きながら、野外を歩くのが快適でした。YMCAのすぐ隣にある運動公園をほとんど毎日散歩しておりました。6月に入ってだんだんと暑くなり、最近では最高気温が30℃を超えるようになり、1時間程度歩くと、びっしょりと汗を掻くようになりました。さいわい2週間ほど前からYMCAが部分的に再開されました。グループで行う、ヨガやプールでのさまざまなクラス、チームでのバスケットの練習などはまだできませんが、個人的に歩いたり、走ったり、泳いだり、ストレッチをすることはできるようになりました。それでも、閉鎖前に比べればガラガラの状態です。入館する時には体温を測られ、なにも症状がないか質問されます。冷房がありますので、涼しくて助かります。

 

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一昨年から、お寺の境内の3分の1ほどの芝生を取り除き、中西部に自然に生えている野草を植えるプロジェクトをしてきましたが、最近black-eye Susanの花が満開になりました。写真を添付します。日本でも帰化植物として北海道などに生息していて、特定外来生物として防除の対象になっているのだそうです。日本語の名前はアラゲハンゴンソウ(粗毛反魂草、学名Rudbeckia hirta、別名:キヌガサギク)。濃い目の黄色の花弁で、真ん中にこげ茶の部分があり、ひまわりを小さくしたような花をつけます。反魂草という名前がどういう意味なのか気になったもので、調べて見ると、強い香りで死者を蘇らせると言われていたとのことです。もっとも、三心寺に咲いているblack-eye Susanとは似ているけれども違うようです。小さな草原ができたような感じです。

 

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人間があまり外を歩かないし、自動車も普段より少ないからか、鹿の出現が目立ちます。毎朝のように何頭かのグループで食事にきます。最近では、人眼がいてもよほど近づかない限り逃げなくなりました。昨日撮った鹿の写真も添付いたします。

 

22日に72歳になりました。例年ですと、6月は夏期安居の最中で、初旬に5日間の接心があり、第三の週末に首座法戦式があり、7月初めの禅戒会、受戒の式の準備で法名や血脈を作ったりなどで最も忙しく、にぎやかは月なのですが、今年は全ての行事が中止になり、私と家族以外、来客もほとんどありません。寂しいといえば寂しいのですが、私は周りに人がいないことは全く苦痛ではありません。引退を予定している2023年の6月まであと3年になりました。無事に過ごし、少しでも人々のお役に立てるような仕事を、体力と気力が続いてくれれば、ささやかに続けていきたい願っております。

 

5月のオンラインでの眼蔵会が終わってから、8月の、これまたオンラインでの眼蔵会の準備をしております。今回は「無情説法」の巻です。5月に読んだ「諸法実相」は1243年、越前に移転された年の九月に書かれましたが、この巻は同じ年の10月2日、場所は同じ吉峰寺での示衆です。中国禅の歴史の中で、無情説法という概念がどのようにして成立したのかを手元にある限られた文献とインターネットで得られるインフォーメションで見直しています。「涅槃経」では有情にしか認められていなかった佛性が無情にも佛性があるのだという考えが出てきたのは、三論宗から禅の牛頭宗を通してということのようです。六祖の弟子だった南陽慧忠が、無情が仏法を説いていると主張し、潙山やその弟子の仰山、香巌、霊雲などに受け継がれ、そこから繋がっているのが、雲巌、洞山に始まる曹洞禅になっていくという流れがあるということがわかりました。「無情説法」の巻で引用されているのも、南陽慧忠から雲巌・洞山師弟につながる「無情説法」についての会話です。しかし、「諸法実相」の巻の主眼が仏祖の現成としての身心脱落の坐禅の実践ということだったのと同じで、「無情説法」の巻のメインテーマも無情に佛性があるかどうか、説法をするかどうか、というような仏教の教学的、哲学的な議論ではなく、私たちの修行の中で、説法とは何か、聞法とは何かということだと思います。

 

三心寺の坐禅、その他の活動は副住職の法光が自宅からZoomを通じて行っています。週5日間の早朝の坐禅と朝課、木曜日夕方の読書会、日曜日朝の坐禅法話などです。

今月の9日には、サンガ・ワーク・ディがあり、主に境内の整備をしました。10人ほどの人たちが参加してくれました。午前九時から、屋外で1炷の坐禅をし、そのあと、午後四時頃まで、庭の手入れをしていただきました。7月には、オンラインの1日接心を企画しています。

 

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6月26日

 

奥村正博 九拝