三心通信 2020年1月

 

元旦から少し寒くなったこともありましたが、概ね穏やかな天気が続いています。本格的な降雪はまだありません。むしろ、何回か雨が降りました。水分を十分に吸って苔庭の苔の緑が鮮やかです。

 

今年も正月1日と2日は年頭のご挨拶を書き、宛名書きと署名をし、封筒に住所を印刷し、投函する作業をして過ごしました。1993年ですから、30年近く前に日本からアメリカに移転してから、特に御用のない限り、日本の皆様には年頭のご挨拶と、暑中のお見舞いだけがつながりとなりました。毎年同じような味も素っ気もない文面の近況報告で、申し訳ありません。私の歩みの中の様々な局面でご縁があった方々、三心寺を創立する際に物心両面でご支援していただいた方々に、三心寺が今なお存続し、坐禅修行と仏法の参究を続けているということをお知らせさせていただくことは、私自身が糸の切れた凧になってしまうことを防いでくれています。

 

9日(木)夕方から12日(日)昼食までの接心には大体いつもどおり10名ほどの参加者がありました。今年も静かな接心で新しい年を始めることができて有り難いことでした。

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2016年に法光が副住職になって最初の2年間は、副住職はハーフタイム、あとの半分はオフィスでの仕事を担当してくれていました。2018年に事務仕事担当の人を雇用することができて、法光はフルタイムの副住職になりました。それ以降、接心の指導を担当し、毎朝の坐禅、朝課の導師を分担し、毎月のニュースレターを作成し、毎週木曜日のディスカッション・グループを指導し、アメリカ国内やヨーロッパ、南アメリカに在住する三心関係の道場と連絡をとって、三心禅コミュニティのネットワークを構築する仕事、ボード(理事会)のメンバーと緊密に連携して三心寺の運営を円滑に進めること、など多方面の活動をしています。

 

私が引退する2023年まで、7年間を住職交代の準備期間とする計画でしたが、丁度半分の3年半が経過しました。この移行期間の計画は順調に進んでおります。私が少しずつ退いていき、法光がサンガの指導者として認められるようになり、またお寺の運営を彼女の理想通りにしていける体制を作りつつあります。私はお寺の運営、経営、経済面には全く興味も関心も、知識も能力もないものですから、坐禅修行と仏教、道元禅師の宗乗の参究だけを進めてきました。1975年にバレー禅堂に行く際に、内山老師からお金や人を集めようとするな、静かに坐禅修行だけをするようにと言われたことを実践してきたつもりです。私自身も自分のミッションは内山老師から教えられたこと、日本で道元禅師の宗乗として学んだことをなるべく、何も足さず、何も引かず、そのまま伝えることだと考えておりました。私のやり方を受け入れるかどうか、受け入れた後、どう変えていくかは、私の弟子たちの仕事だと考えてきました。ですので、三心禅コミュニティは修行や宗乗の勉強の面では成長してきたものの、組織の運営面は余り進歩しないままでした。お寺の組織、運営面では、法光が本当の意味での創立者となることと思います。

 

Dogen Instituteでは、これまで私の講義のトランスクリプション、レコーディングしたものを編集しオンラインで入手可能にすること、三心寺の記念事業としての「生死法句詩抄」、Boundless Vows, Endless Practice の刊行など主に私の仕事をまとめ、人々に提供することを活動としてきました。現在、国際布教師でCedar Rapid Zen Center の住職である瑞光Redding 師に「正法眼蔵八大人覚」の解説の執筆をしていただいております。同じく国際布教師で、もとMilwaukee Zen Centerの住職だった洞燃O’Coner 師に私の良寛詩の講義と随筆、洞燃師と法光が昨年、越後の良寛さんゆかりの場所を訪問したおりの感想文、写真を一緒にして一つの本にする企画も進んでおります。他の禅センターで指導する人たちの協力も得て、一般の出版社が手を出さないような曹洞禅に関する本を作っていけるようにと願っています。印刷した本を自分たちで流通経路に載せなくても、オンデマンドにするか、電子書籍としてオンラインで提供することも可能ですから。こういう方面では私は役立たずなので、法光、Dogen InstituteのディレクターのDavid Thompson、その他の有志の人たちにお任せです。

 

新訳の「長円寺本・正法眼蔵随聞記」および「道元禅師和歌集」の英訳と解説とを合わせて一冊の本としてWisdom社から出版されることになりました。両方ともすでに原稿は出版社に送りました。2021年には出版される予定です。内山老師が「生命の実物」の中で紹介されたカボチャの話をもとに、子供のための仏教絵本を作る企画もDavid と有志の人たちの協力で作成されたものです。Wisdom社からSquabbling Squashesというタイトルで出版されることになり、契約を完了しました。

 

2月にはサンフランシスコ大学の哲学の教授がオーガナイズされるCoastal Zenというコンファレンスに参加します。初日には学生たちも参加するということで、一番最初に話をさせてもらうようにお願いしました。近年、あちらこちらの禅センターに行っても、参加者の大概は中年以上の人たちで、若いと言っても30歳台の人たちというのが普通です。今回は大学生に向かって話ができるので、なんとか聞いて興味を持ってもらえるような話にしたいと願っております。私が出家した70年代は安泰寺の雲水も大多数が20歳代でした。75年にアメリカに行った頃もほとんどが若い人たちでした。最近の若い人たちはすることが多すぎ、忙しすぎて、「何にもならない」坐禅をしている暇はないようです。

 

その後、21日から23日までの週末にIntro Dogen (道元入門)と題した週末のリトリートがあります。まだ眼蔵会で正法眼蔵を勉強する準備はできていない人たちのために、道元禅の基礎知識を提供するための講座です。道元禅師の教えの中の戒、定、慧について、基本的な知識と勉強の仕方などを話す予定にしています。

 

その2日後、2月25日からヨーロッパに行きます。今回はイタリア、ギリシア、フランス、イギリスの4カ国、5つのセンターを訪問し、法話や講義、接心をします。無事に責任を果たすことができるように願っております。

 

 

1月26日

 

奥村正博 九拝